Environmental Sculpture
僕たちのまわりに美術を
国立近代美術館 学芸員 千葉成夫
深井美子さんに期待する
2年ほど前に「環境と彫刻」の問題を扱った、アメリカの専門家の本を訳したことがあるが、彫刻に限らず、住居・建築物・環境のなかに美術作品を取入れる ということについて、僕たちはもっと真面目に考えてみるべきだろう。建築家にせよ、クライアント(公共建築物なら行政当局)にせよ、総建設費中のなにがしかを、仕方がないから美術作品に充当する、と考えているようではまったく困るのだ。発想じたいを、大きく転換させなければいけない。そんなことを思っていた時、自分の画廊を開いたばかりの深井美子さんの口から、環境のなかに美術作品を広げていく面でも仕事をしてゆきたいという意向を聞いた。アイディアはじつにタイムリーであり、大いに期待したい。時代はいま大きく変わろうとしている。環境のなかの美術作品は、美術館にデンと収まるようなものとはまた違う、 環境とその変化にふさわしいありかたと形態とを求められている。そして、新しい環境には、彼女のように若い世代の新しい発想がふさわしいはずである。
深井さんとは、ふとしたキッカケで知りあったが、その後、僕の動き回っている狭い世界の視界から消えたりまた現れたりしていたが、(彼女にとって啓発的だったに違いない)外国旅行を経て、今度は、驚くべきことに、すでに独立した画商としてスタートを切った姿でまた現れた。環境と美術作品ということについては、 ヨーロッパでの見聞に刺激されるところが多かったようだ。僕もヨーロッパで少し過した経験のある者として、ヨーロッパにおける環境や生活と美術作品とのなじみ具合がどんなものであるか、若干の羨望の念とともに今でも思い起こす。それをそのまま模倣するというのではなくて、僕たちにふさわしい行き方がなければならない。
深井さんが手がけようとしていることは、非常に重要な意義をもちうる仕事なのである。