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快適な環境をめざして    美術評論家  故 岡田隆彦

 1964年のオリンピックを機に、にわか仕込みの環境整備がおこなわれたあと、1970年の大阪万国博あたりから、日本もようやく国際的なレヴェルで環 境問題と取り組むようになってきた。「アメニティ」という言葉が盛んに使われるようになったのも70年代以降のことである。「アメニティ」とは、本来、建 物や場所の心地よさとか快適さを意味する英語だが、一昔まえまで、「風致」という堅苦しい訳語があてられていた。いまでは、「環境の快適さ」といった意味 で用いられている。とにかく都市の複雑化した時代に生きるわたしたちが、日常において、切実に必要としているものであるのはたしかだ。実際、環境はぜひと も快適であってほしいが、そんなにたやすくえられるものでもない。何より人々の関心が必要だし、専門家たちの工夫が必要だ。緑をふやせば事足りるというわ けでもないし、おもしろおかしくすれば誰でも満足するというわけにはゆかない。環境や公共空間が快適であるためには、単に見てくれがきれいであるだけでは なく、よく整理されていて安全であり、かつ心和むような性格を具えていて、暖かく、おもむきがなくてはなるまい。それに、共有されるものなのだから、誰に でも抵抗なく受け入れることができると同時に、ほとんどの場合、お互いに見知らぬ関係にある人々の気持ちをつなぎとめる雰囲気を持っていることが望まし い。とはいえ、特定の思想や名誉を象徴する銅像を中心部に建てて、周辺の空間を性格づけ、人々をそこにひとしく注視させるような時代は終わった。このこと については多くの人たちが賛成するだろうが、現実を見まわしてみると、個人の銅像でこそないが、何か特定の個人的趣味や権威を強調するような存在のものが まだ少なくないのは残念である。わたしたちはもう、押しつけがましいものにはうんざりしている。ほしいのは、わたしたち一人一人がみずから自由にふるまう ことができ、つねに自分自身をとりもどすことができるような空間であり環境である。いま、そうした快適な空間なり環境なりの実現をめざして、さまざまな課 題と積極的に取り組んでいる専門家たちがいることはたのもしい。
かれらは、明快は空間を設計したり、限られた場所を豊かなものに変身させたり、親しみやすい魅力的な彫刻や絵画で人々の眼をたのしませたりする。動きや水 の効果を活かして、愉快な気分にさせたり、自動車の騒音を消してくれたりする。さらには、そうした個個の造形やデザインを総合しながら、景観を演出した り、人々の歩行や視線の移動がスムーズになるように全体の配置や記号と標識を統一したりする。もちろん今日のように集団生活が入り組んでいる時代にあって は、企業や団体、個人などの利害関係が環境に反映することもあるわけだが、そんな場合に、政治力によってではなく、想像力と柔軟な感受性を発揮して、ぎく しゃくした対立関係に折り合いをつけるのも、かれらの仕事である。頑固に個人の殻に閉じこもって少数の人を相手に純粋な芸術を追及することも貴重な試みだ ろうが、これからは、もっと芸術が日常に向かって開かれてゆき、環境の快適さを実現するのに役立ってほしいものだ。そうでなくては、物が豊富であっても、 心は、いつまでもまずしいばかりではないか。

(環境美術計画を施行するギャルリー志門(環境美術計画室)の設立にあたって生前岡田隆彦先生に環境美術についてのご寄稿をいただきました。)
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