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ボディーに木漏れ日、光と空間は色彩の中に
超絶技法と主題の幸福な一致
田邉光則は車の形態と色彩のみに興味を持ち、機械的なメカニズムには関心がない。26年間、車体を深く見ること、愛すること、さらに車に絶対の美を確信し
てきた。光と影が躍る車のボディーをきっぱりと見据え、鮮やかに反射光や木漏れ日を描き出す。それは光彩に満ち、空間が重層し、謎の生気を帯び、神秘的な
までに美しい。絵画の内的な光を抽出し、光と空間は色彩の中にあると実感させる。画家が描いたのは、田邉自身にしか見えない光景である。さらに独自の精神
の内景の表出であり、自然観の一端も示す。理知と感覚の全量が出て、抜群のヴィジョン創出力である。
油彩の青や茶色の下塗りに始まり、境界線のぼかし方に苦慮し何層にも重ねる。表現を支持する絵具を分母とするなら、その上の分子は描く行為である。田邉
は超絶技法であるため、物質性に比べ描く行為が際立つ。表現の骨格においてもディティールにおいても絵画の秩序に満ちている。イメージを限りなく増殖する
表層である。ここにも技法とモチーフの幸福な一致をみる。 |
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