指の行為で表層と深層の宇宙的な調和世界
−美術評論家・赤津侃−
絵画の平面性は構造的な画面構築と密接に結びつく。深尾良子は独自の技術方法でこれを貫く。ここに人間の精神と物質との激しい闘いを見る。表現の意欲と
秩序への意思という対立する力のせめぎ合いを、道具を使わず指の行為で統一する。アクリルを塗り、オイルパステルで四層まで造り、それを削り、ひっかき、
また何度も塗り重ねる。この手の行為が自由で心地よいと画家は言うが、画面の秩序を保つために厳しい統制力を働かせている。
一本の線に触発され、それが連なる線の重層化と多様な色面に展開する表層のイメージは、その奥にある深層のイメージまで喚起させる。平面を層構造として
把える画家の意思と創造力がここにある。自在な構成と掘り起こした色彩の表出力により人間の内的生命力の直接的表現に昇華している。この宇宙的ダイナミズ
ムのある調和の世界に、時代の記憶の痕跡をも辿るのである。
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