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雨宮 啓子
「感傷装置」 |
(高橋 士朗・造形作家 Aラボ教授):
時間と追憶をテーマに制作している雨宮さんです。フィルム媒体を傷つける破壊的な表現方法から出発して、穏やかな透明立体の造形に至りました。記憶のトラ
ウマは癒されて、追憶ノルタルジアと経年変化しますが、大脳皮質に構造化された内的表象情報は、より高度な心的総合によって美術創造となるでしょう。 |
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大田 萌
「時間軸の上での私達」 |
(佐々木 成明・映像作家 Cラボ准教授):
水の中に落ちる白いインクは二度と同じ状況を生み出すことなく常にさまざまな美しい形状を創り続ける。移り変わっていく様子は本質的な自然の情景の振る舞
いそのものに思えてくる。誰もが感覚的に思いを巡らして見入ってしまう小さな水槽に閉じ込められた小宇宙は、かけがいのない思念の場である。注視している
と意味や重力的な感覚さえ忘却されてしまい心地良いゲシュタルトの崩壊が訪れる。この装置は観る者に感性との対話を可能としてそれぞれの心象に大自然を創
造する。 |
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佐賀 達
「FACE」 |
(久保田 晃弘・サウンドアーティスト Bラボ教授):
コミュニケーションのインターフェイスとしての顔をモチーフに、それをモザイクと3Dを用いてアルゴリズミックにデフォルメすることで、現代の社会の状況を表現する。デフォルメの強さは周囲の環境音に反応し、不定形なモーフィング手法のようにも見える。 |
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伏見 再寧
「M.lanthanum」 |
(森脇 裕之・ライトアーティスト Aラボ准教授):
伏見君の作品の魅力は、映像のも生々しさを伝えてくれるところにある。リアルであるということだ。前世紀からの映像メディアの進歩はつねにリアルの追及の
歴史であったわけだが、はたしてそれをクリアしてこられたのか、疑わしいところも残している。そういうなかで、あえて時代の異物化しつつある実物投影機の
原理をもちだした映像に今日的な意味を見出そうとする伏見君の取り組みは重要な意味を持つものとなるだろう。 |
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牧口 英樹
「過ぎ去る時間」 |
(佐々木 成明・映像作家 Cラボ准教授):
写真術における記録のあり方と、人間の記憶の差異について、牧口は自らの作品を通してどれだけ多くの記憶の累計として機能できるかが問われ続けた。可能な
限りディテールをそぎ落とした写真によって、本質的な記憶の有り様を提示しようと、作者は客観的で冷静な眼差しを対象に向け続ける。この作品では、決めら
れた場所において、一定の時間間隔で投影された写真が一列に提示されている。それは銀塩写真のコンタクト・プリントを眺めるのと似ている。鑑賞者は作者が
用意した客観的で冷静な眼差しを同様に対象に向けさせられるが、その焦点において、不確かで言説は不可能だが、豊潤な記憶の根底に触れることを可能とす
る。 |
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