2022年3月7日(月)- 3月12日(土) 短冊・書/熊谷雲炎

現代の日本画家たちが万葉集の中から一首選び、千年の時を超えて和歌の世界を描きます。今も昔も変わらない人々の想いをぜひご高覧下さい。





【出品作家】
青木 園/大島智子/甲斐めぐみ/賀川明泉/栗田成己/桒原雅美/増田晶美/藤倉春日/藤本理恵子/本間孝江/松本久美/横山タケ子





会場風景













増田晶美  大島智子  本間孝江

(左)増田昌己 「チェリー」 10号   158,000円(税別)

選んだ和歌:さつきまつ 花橘の香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする   詠人不知(古今和歌集)

【現代訳語】五月を待って咲く橘の花 その香りに接すると昔親しかった女性が服に焚き付けていた香りを思い出します。









(中)大島智子「知らえぬ恋」 F8  160,000円(税別)

選んだ和歌:夏の野の 繁みに咲ける 姫百合の 知らえぬ恋は 苦しきものを    大伴坂上郎女 巻八(一五〇〇)

【現代訳語】夏の野の茂みに咲いている姫百合が誰にも知られないように、相手に知られていない私の恋は苦しく切ないものです。









(右)本間孝江

選んだ歌:香具山と 耳梨山と あひし時 立ちて見に来し 印南国原    中大兄皇子 巻一(十四)

【現代訳語】香具山と耳梨山(みみなしやま)が争ったとき それを止めようと阿菩(あぼ)の大神が印南国原まで来て争いが収まった(という播磨風土記の神話を読みました。)(印南国原を誉める土地誉めの歌)













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桒原雅美  松本久実  甲斐めぐみ  青木 園

(左)桒原雅美 「強くはかなきもの」 M10号  80,000円(税別)

選んだ和歌:我が形見 見つつ偲はせ あらたまの 年緒長く 我れも偲はむ    笠女郎  巻四(五八七)

【現代訳語】この形見を見ながら私のことを思い出してください。年を経ても長く私もあなたを思っていますから。









(中①)松本久実 「願いを待つ」 F10  180,000円(税別)

選んだ和歌:み吉野の 玉松が枝は はしきかも 君が御言を 持ちて通はく    額田王  第二巻(一一三)
   
【現代訳語】吉野から届いた苔生す松の枝はなんと愛しきことよ。貴方様の御言葉を(松の枝が)持ってきてくれました。(弓削皇子(ゆげのみこ)が額田王に歌と一緒に苔むした松の枝を長寿の祝いに贈った歌に対するお返しの歌。)









(中②)甲斐めぐみ 「月光」 F10号  50,000円(税別)

選んだ歌:月読みの 光に来ませ あしひきの 山経隔りて 遠からなくに   湯原王 巻四(六七〇)

【現代訳語】月の光を頼りに逢いに来てください。あしひきの山が隔てるような遠い道ではないのですから…









(右)青木 園 「尾花」 39.4×30.7cm(額52×40.3cm) 手漉き和紙に墨、金泥、アクリル  100,000円(税別)

選んだ歌:人皆は 萩を秋と言ふ よし我は 尾花が末を 秋とは言はむ   詠人不知 第十巻 (二一〇〇) 

【現代訳語】人はみな萩の花こそ秋を思わすものだというが、しかし私はすすきの穂先にこそ秋を思うのだと言おう。













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賀川明泉  栗田成己  藤本春日  横山タケ子

(左)賀川明泉 「春日」 10 P    100,000円(税別)

選んだ和歌:うらうらに 照れる春日に ひばり上がり 心悲しも 一人し思えば   大伴家持 第十九巻(四二九二)

【現代訳語】のどかに照る春の日差しの中をひばりが飛んでいく。そのさえずりを耳にしながら一人物思いにふけっていると、なんとなく物悲しくなっていくものよ。









(中①)栗田成己 「白根草もつ君の色」 45×53cm  50,000円(税別)

選んだ和歌:み吉野の 石本さらず 鳴く河蝦 うべも鳴きけり 川を清けみ   詠人不知  巻十 (二一六一)
                  
【現代訳語】ここ吉野川の岩場の蔭で蝦(かはづ)が動かず、じっとして鳴いている。それももっともだよ。川が清らかなので。









(中②)藤倉春日 「蓮花」 S10  100,000円(税別)

選んだ歌:ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に 溜まれる水の 玉に似たる見む   第十六巻(三八三七) 詠人不知

【現代訳語】久々に雨でも降ってくれないだろうか。蓮の葉に溜まった水が宝玉のようにきらめくのが見たいものです。









(右)横山タケ子 「つる渡る」 10号  120,000円(税別)

選んだ歌:若の浦に 潮満ち来れば 潟を無み 葦辺をさして 鶴鳴き渡る    山部宿禰赤人  巻六(九一九)

【現代訳語】和歌の浦に潮が満ちて来ると潟がなくなり、葦のほとりをめざして鶴が鳴き渡ります。













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藤本理恵子

藤本理恵子 「 曙 」 P10  450,000 円(税別)

選んだ歌:今夜の 暁(あかとき)ぐたち 鳴く鶴の 思ひは過ぎず 恋こそまされ    詠人不知 第十巻(二二六九)

【現代訳語】夜の明け方過ぎの早朝、鶴の切ない鳴き声がする。まるで恋人に逢えないで悲しんでいるようだ。そんな鳴き声のように私の切なさは募り、恋心が増すばかりです。













短冊の歌には現代訳語と解説が添えられていますので、絵とともに歌が楽しめます。書は熊谷雲炎先生によるもので文字の美しさも必見です。ぜひ会場にてご高覧頂ければ幸いです。予約不要。


























DM