9月21日(月)-9月26日(土)









(左)「話をしないワケ」2020 1620×1940mm キャンバスにアクリル・クレパス  応相談

(右)「モノローグ」2020 1620×1303mm キャンバスにアクリル・クレパス  応相談









(左から)「空想・夢想と日常の中のアレ」2020  530×410mm  パネルに紙、アクリル・クレパス  ¥72.000(税別)

「(round about)」2018-2020 727×606mm キャンバスにアクリル・クレパス ¥150.000(税別)

「hide-and-seek」2020 900×650mm キャンバスにアクリル・クレパス  ¥200.000(税別)

「monologue」2020 910×727mm  キャンバスにアクリル・クレパス  ¥200.000(税別)

















「顔シリーズ “Face”」2019-2020  543×393mm  紙にアクリル、クレパス  各¥12.000(税別)









(左から)「ドローイング」no.0  2020年作 258×365mm   紙にアクリル・クレパス  ¥12.000円(税別) 売約済み

「ドローイング」no.96  2020年作 258×365mm   紙にアクリル・クレパス  ¥12.000円(税別)

「音楽シリーズ“contrast”」2020 240×300mm キャンバスにアクリル・クレパス  ¥30.000(税別)

「closer20-34」2019-2020  410×318mm パネルに紙、アクリル、クレパス  ¥48.000(税別)

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※価格は2020年9月現在。





























空と縁起

 仏教が「空」を最重要の概念としたのは、煩悩を絶つための方便だっただろう。煩悩は、「自分の思いの通りに世の中が運んで行かない」という状況が生み出す。しかし、それは単に「自分の思い」から見た世界であって、人間は自分の都合で作った○○主義などという見方で世界と向き合っている。元来すべては「空」だと気付いたとき、自己と世界は全く新しい様相で再び関係を結び始める。自分を含めて、あらゆるものが生まれ変っていくように感じられる。その状態を「縁起」と呼んだのだ。

 仏の教えは、その見方をやめ新しい縁起により世界に向かえということだ。この教えに従えば、画家の仕事もキャンバスや画用紙の上で作品ごとに、現実世界を「空」と化し、新しい縁を生起させていることなのだと見えてくる。

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 石井抱旦は、書という近代美術の中では納まりの悪いジャンルで活躍してきた。前衛書という形で美術の分野で書が認められるようになったのは戦後のことだ。それも浮世絵と同様、外国での高い評価の故であった。明治以来「書は美術ならず」(岡倉天心は、それを論破していたが…)として近代化にまい進してきた日本の美術界にとって、ハーバート・リードの『近代絵画史』(1968年)に唯一図版が掲載された日本人の作品が書であったという皮肉。文字として見ないことによって書が美術と認められたということではない。書≠美術という近代の枠組みを「空」とすることで、美術に新しい景色が見えてきたのだ。

 逆にいうと書の界隈にもそれが出現していたはずなのだが、筆者にはなかなかそうは感じられない。だから石井が、書と美術の枠を軽々と飛び越えていることは刮目すべきなのだと思う。彼の作品は近代美術の「自己表現」という強固な枠をも「空」とする。

 石井の方法は、簡単にいえばステイング技法—絵の具を流れるに任せる—というものだ。ベースに紙やキャンバスではなく、アクリル板を選んだのは、顔料の動きをできるだけ自由にさせるためだが、それを人為的と見るべきではなく、神降ろしのための舞台を整えたととらえるべきだろう。その上で造形が人間と自然の協働の証となりえた姿として出現する。

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 松林彩子は、理系の大学卒業後に絵画を学び始めた。理系という極を得ることによって、感性が反発してはじき出されたのだろうか。彼女の絵には、感情を開放したアンフォルメルのようなスタイルとはうらはらに、合理的な軸が感じられる。その合理性は、科学者が行う地道なフィールドワークや実験のようなスケッチに支えられているようだ。

 「スケッチが1000枚を超えたあたりから、絵が出来上がってきた」という言葉に誘われて数冊のスケッチ帖をめくると、ほとんどは作家の暮らす、川崎市北部の住宅団地の風景だった。多摩川支流の小河川が作った谷の両側を埋め尽くして住宅が段々畑のように建て込んでいる。(筆者が訪ねたとき、谷を挟んだ向かい側の斜面では、建物群のあいだで桃畑が一筋、マゼンタ色の鮮やかな花を咲かせていた。)スケッチが1000枚を超えたとき、風景の中の建物と木立という枠が「空」となり、幾何学形と不定形のせめぎ合う画面が出現した。風景が「縁起」となったといえるだろう。

 その「縁起」はキャンバスの上では、絵の具の物質として手応えのある固まりと、生命力あふれる筆の動きがぶつかり合う世界として、拡大され抽象化されて表現されている。作者の生活する日常風景が描かれているのだが、そのまま物質とエネルギーがせめぎ合う宇宙の現れであることを感じさせる。これは禅的な「空と縁起」の世界観といえるだろう。

                小泉晋弥(茨城大学名誉教授・美術評論家)





















松林彩子   Saiko Matubayashi

東京都生まれ
日本大学生物資源科学部農芸化学科卒業
2010  武蔵野美術大学造形学部通信教育課程油絵学科卒業

【個展】
2015 松林彩子展(櫟画廊/銀座)(’15,’16,’17,’18)
2017 松林彩子展(K’s Gallery-an/銀座)
   -face- (Galley G2/銀座)
2020 銀座スルガ台画廊
2020 小泉晋弥企画『空と縁起』vol.1 松林彩子展(ギャルリー志門/銀座)

【グループ展】
2011 .kom展(~’16 ギャラリー絵夢/新宿、ギャラリー暁/銀座)
2013 国展絵画部企画展示”新しい眼”(国立新美術館)
2014 国展入選(~’19)
    Zero Art -Japanese artist group exhibition (Hpgrp Gallery/N.Y. 米国)
2016 未来抽象芸術展(全労済ホール・スペースゼロ/新宿)(’16,’17,’18,’19)
2017 景の接触展(コート・ギャラリー国立/国立)
2019 .kom展(銀座スルガ台画廊)
    art KARLSRUHE (Karlsruhe /Germany)
    世代を超えて二人展 石原章吾・松林彩子(K’s Gallery、K’s Gallery-an)
    未来抽象芸術展&Zero-K (せんだいメディアテーク ギャラリーb)
その他グループ展多数