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所在地
池田俊彦展
―第1回「ドローイングとは何か」展大賞受賞記念展ー


池田俊彦展 ―第1回「ドローイングとは何か」展大賞受賞記念展ー
会 期
2012年1月16日(月)-1月28日(土)日休み
時 間
1:00~19:00(最終日17:00まで)
「笑う門番1」
展覧会はパノラマでご覧ください。
【出品作品―老王の宮殿シリーズ】

1.『笑う門番 一』 2012年
インク、水彩、紙   54.2×38.2cm   18,900円 (ヌーチストフレーム付き)

2.『笑う門番 二』 2012年
インク、水彩、紙   54.2×38.2cm   18,900円 (ヌーチストフレーム付き)

3.『笑う門番 三』 2012年
インク、水彩、紙   54.2×38.2cm   18,900円 (ヌーチストフレーム付き)

4.『笑う門番 四』 2012年
インク、水彩、紙   54.2×38.2cm   18,900円 (ヌーチストフレーム付き)

5.『笑う門番 五』 2012年
インク、水彩、紙   54.2×38.2cm   18,900円 (ヌーチストフレーム付き)

6.『笑う門番 六』 2012年
インク、水彩、紙   54.2×38.2cm   18,900円 (ヌーチストフレーム付き)

7.『笑う門番 七』 2012年
インク、水彩、紙   54.2×38.2cm   18,900円 (ヌーチストフレーム付き)

8.『笑う門番 八』 2012年
インク、水彩、紙   54.2×38.2cm   18,900円 (ヌーチストフレーム付き)

9.『老王の宮殿 ―闇に立つ―』 2011年
銅版画 ed.9  100×70cm(108×79㎝)  157,500円 (フレーム:25,000円)

【銅版画・小品(シート価格)】
『翁ーQ 円錐の反乱 fs』
16.9×12.4cm  3/10 ¥31,500
『姥ーR fs.』 2004
16.8×14.2cm 1/15 ¥34,650
『翁ーQ fs.』 2004
13.0×8.0cm 1/10 ¥26,250
『老犬ーA fs.』2006
9.0×10.0cm 4/10 ¥26,250
『老牛ーA 』2008
11.5×6.5cm 2/10 ¥26,250
『老鼠ーR fs.』2004
16.8×14.2cm 1/10 ¥26,250
老王の宮殿


地上で最後の生き物の
その末期の呼吸を
彼の大きな耳は確かに拾った。
ソレはかつて人と呼ばれた生き物の屍に寄生した
針の先よりも小さな細菌の、産毛を揺らす事の出来ぬ程
小さな、小さな最後の囁きだった。

ソレこそまさに彼がこの地上で数十億年待ち続けた
即位の鐘の音
その世界の終焉と、
逆転の始まり
新たな王の即位を告げる小さなファンファーレ

王となった彼は耳を澄ませる。
何十億光年も彼方の宇宙の始まり
その無機的な粒子の渦に刻まれた生命の記憶
かつてここにただあり続ける事を求め
叶わなかった者たちの小さな囁き

渦巻いたその奥の
無数の無機的なノイズ
そのなかでかすかに聞き取れるその一点に
彼は全神経を集中する。
その声を、その意味を、その存在の一つ一つを
身の内に取り込んで行く。

無機的世界の逆転の始まり

渦巻いたその先の自らの王国を夢想し
新王は闇の中に立ち続ける。



笑う門番


王は宮殿を築いた。

無色で正方形の巨大な構造物
宮殿と呼ぶにはあまりにも無表情なその立方体に
やはり無表情な四つの門が穿たれていた。

門は閉ざされている。
その扉は
一億の駿馬と十億の戦車、
そして百億のタンカーに引かれても
決して動かぬ程に大きく重い。

しかし門番は知っている。
時が来れば扉は
巨大な身体をゆがめ
カナリヤのような甲高い軋みをあげながら
ゆっくりと
まさに牛歩のごとく、ゆっくりと開くという事を。

開門
古い世界の逆転の終わりと
新しい王国の産声

そこは、かつてただここにあり続ける事を求め
叶わなかったもの達が
ただここにあり続けることを許される
肯定の王国

開かれたその先の主君の王国を夢想し
門番ははにかんだ微笑みを浮かべる。


池田俊彦(版画家)